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HEART

奇妙なまでに息子を愛する母マリア、心臓病に犯されるゲイリーとその妻テス、そしてテスの浮気相手である作家のアレックス。この4人を中心に物語は展開します。ある日突然、交通事故によって息子を亡くすことになったマリア、そしてマリアの息子の心臓を移植することになったゲイリー。心臓を移植されることによってゲイリーとマリアの間に奇妙な関係性が生まれ、「マリアと息子」「ゲイリーとテス」「アレックスとテス」という様々な愛が対照的に描かれます。

予告編で流れていた「血が滴り落ちる袋を持った女性のシーン」は、映画の冒頭でいきなり流れることになります。マリアが持つ袋の中には、おそらく息子の心臓が入っているのでしょう。そこまでは誰しもが想像できることであり、物語は「なぜそのような結末に至ったのか?」という、マリアの口から出た証言を映像化するような展開で始まります。

全編を通じて異様な空気が流れるサイコスリラー的側面を考えると、最初の時点でおおよその展開が読めてしまうと思います。しかし、この物語は予想を大きく裏切る展開をみせ、随所に張り巡らせらている伏線を含め、非常に完成度の高いストーリーを構築しています。特にラストの展開にはハッとさせられ、2段階オチという形態を効果的に演出している面も素晴らしいといえるでしょう。マリアの“息子に対する愛情”がすべてであり、その最終的な結末は闇の中にあります。

ある種メメントに似ている部分があり、この映画は見る人の数だけ答えがあるのかも知れません。“すべてはマリアの仕組んだものなのか?”それとも“比類なき真の愛こそがなせるわざなのか?”考えれば考える程、“マリアがマリアである理由”を痛感させられることになります。脳死移植という社会的問題を基点にしていることもあり、簡単に語り尽くせるような安易なものではないだけに、自分の中で昇華するだけでもかなりの時間が必要だと感じます。

物語や映画としてのパッゲージング面においては非常に完成度の高い印象を受けますが、その他の面ではツッコミたくなる箇所も多々あります。そもそも気分の良い内容だとは言い難く(ハッキリ言うと気持ち悪い)、血の滴るシーンや斧で側頭部をぶっ叩くシーン、はたまた心臓が生で蠢くシーンなど、残虐性は思った程ではありませんが、そのかわり妙に現実味を帯びた不思議なリアル感が画面から伝わってくるので、重く鈍い空気が止めどなく静かに流れ込んできます。それに加えて脳死移植というテーマに異様なまでの純愛、そして様々な悲劇の死。素直に真正面から受け入れろという方が無理でしょう…。

人によって意見は異なるかもしれませんが、総じて“良い映画”だとは言えます。根本的な部分での好き嫌いはともかく、新たな発見や考えさせられる部分も多々あり、過去から現代に渡っての様々な問題が含められていると思います。純粋にエンターテイメント作品と割り切った場合でも結構楽しめてしまうので、チャンスがあれば是非観ることをお勧めします。
(2002/04)

追伸:
本当はもっといろいろ書きたいのですが、あまり掘り下げてしまうとネタバレになってしまうので、これぐらいの内容で勘弁しておいて下さい(笑)。1998年の映画とはいえ(日本公開は1999年かな?)、メジャー作品というわけではないのでまだ観てない人もたくさんいるでしょうし…
本文:ボブ爺

監督:
脚本:
製作:
製作総指揮:

撮影:
編集:
美術:

衣装:
音楽:

出演:

チャールズ・マクドガル
ジミー・マクガヴァン
ニコラ・シンドラー
ピッパ・クロス
ガブ・ニール
ジュリアン・コート
エドワード・マンセル
スチュアート・ウォーカー
クリス・ループ
ジェームズ・キースト
スティーブン・ウォーベック

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サスキア・リーブス
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ケイト・ハーディ
アンナ・チャンセラー
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