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2002年2月22日から約2ヶ月間インターネット上で公開されていた、SHORT STOP FILM製作によるショートフィルムの第一弾です。主役の理恵を演じる鈴木京香や、出番は少ないながらも脇をかためる杉本哲太や伊藤淳史(元チビノリダー)などといった味のある役者陣に注目です。
休日出勤時に渋滞に巻き込まれてしまい、それを避けるように裏道を走りはじめる理恵。しかしそれをきっかけにして、カーナビが自らの意思を持って理恵に話しかけはじめる。そして“その声”は理恵の奥底に眠る隠された想いへ浸透し、徐々にその気持ちを解放していくことに…。
約15分といった短い時間ではありますが、限られた時間の中で物語をうまく展開させ、なおかつ独自の世界観もしっかり構築されているので完成度はかなり高いと思います。なので、形態としてはショートフィルムとして集約されてはいますが、見終わった後の印象としては中長編作品を感じさせるようなテンポや構成だと感じました。内容的には主人公の心の中を掘り下げていくという重めな題材ではありますが、どこか全体的にサラリとした雰囲気が漂っているので、どことなく平淡な印象を受けてしまいます。しかし、結局は現実世界を見据え、とにかく前向きに生きていくという漠然としながらも建設的な方向性を示唆しているので、この平淡さはある意味意図的なものでもあり、好転的なものだとも言えるのではないでしょうか。
見方によっては“ごく普通の物語”ともとれるので、ショートフィルムに対して過度に期待してしまう“オチ”的要素が薄く物足りない部分もあるのですが、“作品時間が短くても手は抜かずに製作する”という姿勢が評価でき、結果的にそれが全体的な説得力と完成度の底上げにも繋がっているように思います。現状の日本でこのような作品製作が成り立っていることに少し驚きはしましたが、今後も続編が製作されていくようなのでかなり期待ができるのではないでしょうか。
(2003/03)