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インソムニア

「不眠症」という意味のタイトルがつけられたこの映画、アル・パチーノ扮するドーマー刑事が、猟奇殺人事件の解明に迫ると共に自己の内面と向き合う事となり、その葛藤の中で不眠症に陥りながらも両方の問題を自らの行動と選択によって解決しようと奮闘します。

ドーマーは世の中の悪人達を捕らえ社会から根絶させることに重きを置き、徐々に手段を重視しなくなります。結果だけを考えればそれで良いのかも知れないが、そこに生じる“ひずみ”は彼の心の奥底に潜み、じわじわと彼の心を蝕んでいきます(※1)。悪人達を捉えることの正当性と自己の保身がリンクしはじめ、本人にすらその真偽を問えなくなっていく。猟奇殺人事件の犯人との取り引きに応じる傍ら、相棒を誤って殺してしまった事実を隠し続けることに不安を覚え精神的に追い込まれていく…。そんな葛藤の中、彼が最終的に出した答えとはいったい何なのだろうか? 最期の「道を見失うな」という言葉がすべてを物語っており、自分の意志でけじめをつけることの難しさを伝えているようでもある…。

最初は“サイコ・サスペンス”のような印象を受けるかもしれないが、実際にはサスペンスでもなんでもなく、予想以上に淡々と物語が進んでいきます。「メメント」の監督であるクリストファー・ノーランの新作と言うことで、彼特有の“仕掛け”を期待してしまうというのが本音だと思います。しかし、今回の作品はある意味“普通”であり、過度の期待をしてしまうと観終わった後で大きく裏切られた気分になるかも知れません。

映画としてとらえたり、エンターテイメント性を求めたり、観る人によって要求するものは様々だとは思いますが、個人的には「監督が何を描き出したかったか」という部分だけに注視し、それ以外の要素は可能な限り取り入れないようにすることこそが、この作品を理解し楽しむ上での条件のような気がしてなりません。どうやらこの作品にはオリジナル版(ノルウェー)が存在し、クリストファー・ノーランが手掛けた今作はリメイク版といった位置づけに当たるようなので、原作本来の方向性や娯楽性を追求したい場合は、オリジナルの方も合わせてチェックする必要があると言えるでしょう。

アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンクというアカデミー賞受賞俳優が一堂に集まったということや、ロビン・ウィリアムズの悪役という珍しい配役、そして待望されたクリストファー・ノーランの新作であることなど、話題には事欠かない作品なので日本では過剰なティーザー宣伝が行われたとも言えます。それゆえに期待も大きく膨らみ過ぎた感がありますが、ここは一度落ち着き冷静になり、改めて新しくクリアな視点で捕らえてみることをお勧めします。
(2003/10)

※1
過去に犯した“証拠詐称問題”がドーマーのトラウマとなっており、それを暗示するかのように“布に血が滲む様子”や“ついた血を拭う”といった端的な映像となって、冒頭から随所にサブリミナルで挿入されます。最初に起こった猟奇殺人事件とリンクしそうな映像でありながら、実際にはドーマーの内面を描いたものになっているわけです。そのあたりの表現手法がノーラン的感覚ということから来るものなのかも!?
本文:ボブ爺

監督:
脚本:
製作総指揮:

撮影:
音楽:

出演:

クリストファー・ノーラン
ヒラリー・セイツ
ジョージ・クルーニー
スティーブン・ソダーバーグ
ウォリー・フィスター
デビッド・ジュリアン

アル・パチーノ
ロビン・ウィリアムズ
ヒラリー・スワンク
モーラ・ティアニー
マーティン・ドノバン
ニッキー・カット
ポール・ドーリー
ジョナサン・ジャクソン

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