Spreader.info
Contents
Hot News
Art Information
Club Information
Movie Column
Spread Sites
Spread Activity
Spread Experiment
Spread Waver
Spread Gallery
Spread Store
Spread Wine
 
Home > Art Infomation > 鷹木朗氏ロングインタビュー

鷹木朗氏ロングインタビュー


SI: 作品の評価としては、福井の作品展に選出された時がもっとも分かりやすいものだったと思いますが、そのときの心境及びそれが以降の作品制作に与えた影響などをお聞かせ下さい。

鷹木:1999年に開催された福井県の「金津創作の森」での展覧会については、個人的にも全く予想していなかったものだったので、とても面白い体験だったと言えます。ひとつは、展覧会のキュレーターが全く偶然に私の個展を見て出品を依頼して頂いたこと、また、年齢やその思想背景等々、全く私とは接点のない方からだったことです。二つ目には、そういう経緯だったからですが、「アジアの森から」という展覧会のコンセプトも私にとっては不意打ちのようなものだったということです。三つ目には、他の出品作家、もちろん全員初対面の方ばかりだったのですが、特に海外(アジア各国)の作家とじかに接して話す機会があったことです。この体験によって、すぐに制作の姿勢や考え方が変化するということはありませんが、今後、新しい視点で自分の作品を考えていくことに作用する可能性はあると思います。この年には、兵庫の美術館でも風景画をテーマとする洋画の展覧会に出品する機会がありました。私にとって「洋画」は意識したことのないくくりだったので、非常に面白く思いました。また、「風景画」は私のある思考過程の中で重要な言葉だったので、再考する良い機会となりました。いずれにしても、この年は私の作品を少し違った視点で見つめ直す機会になったことは確かです。その結果は、ずっと後になって現れるのでしょう。

SI:作品制作の過程や手法についてのお話を聞かせもらえないでしょうか?

鷹木:これは一口ではとても説明できません。また、作品によっても(外見の形式は一緒でも)千差万別なところがあります。ただ、あえて言うならば、制作の実践の過程が私の思考を生み、それを先へと進めて行く源泉だということです。最初にコンセプトがあるのではなく、制作行動がコンセプトを生み出すのです。更に言えば、制作の動機そのものが制作の中にあります。ですから、用いる材料や技術(私にとっての)はとても重要です。

SI:教師という本業と作家という二足のわらじに加え(もしかして逆だったり?)、普段は人に教える側にいるという現状を考慮すると、モチベーションを高め、さらにそれを維持していくのは困難なことのように思えるのですが、そのあたりの現状を本人はどう感じているのでしょうか?

鷹木:つらい、とてもつらい・・・。というのは、主に経済的、時間的問題です。先程もお話したように、私の制作のモチベーションは制作の中から生まれてきます。やらなくなってしまえば楽だし、それでお終いっていう気もします。しかし、違う面から考えてみると、私は職業的に絵を描くことに対する疑問もあります。制作は何か無償の行為だし、人生を賭けるというのとも、ちょっと違う感じがします。むしろ、生きることそのものと言う方がまだしも近い感じというか・・・。要するに、食事を楽しむとか、子供と遊ぶとか、そういったジャンルかな、と。そしてそれらの視点から考えると、何か人のお役に立つ事の出来る仕事をちゃんと社会的に持っていたい、とも思います。以前の勤め(デザイン学校でデッサンや色彩を教えて、教務事務をやるとか、美術学校の受験研究所で実技指導と教室運営をやるなど)の時は、自分の持っているものを少し人の役に立つところで提供するみたいなスッキリ感はありました。ただ、余りにも時間的に厳しくて、制作はたいへん困難でしたが・・・。その点、今の学校は時間的には少し楽(比較すれば)なのですが、私の中途半端さみたいなものをそのままに学生と接していると言うか、中途半端の拡大再生産なのでは、と恐れを抱く時があります。うまく行かないものです。

SI:個展が終わったばかりでなんなんですが、次回の個展に向けてのイメージなどが既に湧いてきたりするのでしょうか?

鷹木:次は是非小さいサイズのドローイングを制作の過程に取り入れてみたいと思っています。それは作品として発表するものにつながるかどうかは分かりませんが。

SI
:今後の抱負をお聞かせ下さい。

鷹木:やれるところまでやってみるだけです。

SI:最後に「これだけは言わせろ!」というものが何かあれば御自由にどうぞ。

鷹木:日頃考えている事も、いざ人に話そうと思うと、どのような切口からどのようなレベルでどんなふうに語るべきか、思い悩むものです。その作業の中で、自分の考えも整理されたりします。このような機会を与えてもらって感謝しています。かつての学生に何かを与えられるというのは、何だか、とてもラッキー感があります。

SI:以上です。長い間ありがとうございました。

鷹木:どうもありがとうございました。


2001年12月18日〜27日にギャラリー16で行われた個展での作品

Google

前のページ(2/2)
鷹木 朗(たかぎ あきら)
1957年東京に生まれ、その後滋賀県で育つ。
京都インターアクト美術学校などで教師をするかたわら、一貫して絵画の制作を行う。
現在は植物というモチーフを援用しながら大画面に取り組み、絵画が持つ「時間」の意味を考え、深めていこうとしている。
 
Copyright © 2002-2004 spreader.info All rights reserved. since 1/1/2002, web site ver 1.8.2